
スライドを参考にするなら見た目より場面で選ぶ
2026年9月21日 公開 /2026年9月22日 更新
掲載スライドと出典から書いています
資料を作る前に、参考になるスライドを探します。検索して、きれいなものを見つけて、構成をまねる。よくある手順です。
うまくいかないことがあります。同じレイアウトにしたのに読みにくくなります。同じ配色にしたのに安っぽく見えます。同じ枚数にしたのに話が入りきりません。
腕前の問題ではありません。参考にした資料と、自分が作る資料で、読み手が違うからです。
見た目で選ぶと何が起きるか
分かりやすいのが表紙です。
エン・ジャパンのパーパスのページは、地球の写真を全面に敷いて、中央に一文を置いています。見た目は強く、真似したくなります。
同じ作りで社内の稟議資料の表紙を作ったとします。上司は稟議書を開いた瞬間に、案件名と金額と決裁期限を探します。写真の中央にコピーが浮いている画面には、探しているものがありません。決裁は遅れます。
逆も起きます。京セラの決算説明会資料の表紙は、白地に資料名と社名と日付だけです。整った表紙ですが、同じ作りで採用候補者に渡す会社紹介資料の表紙を作ると、何の会社か分からないまま次のページへ進まれます。
どちらの表紙も、向き合っている読み手に対しては正解です。読み手が入れ替わると機能しません。
集めた表紙
すべて見る →読み手が求めるものは3つ
参考にする資料を選ぶ前に、自分の資料がどれに当たるかを決めます。読み手が何を求めているかで、3つに分かれます。
| 束 | 読み手が求めるもの | 資料の例 |
|---|---|---|
| 判断してもらう | 決めるための材料 | 決算説明資料、提案書、稟議資料、ピッチデック |
| 分かってもらう | 手順と理由 | 登壇資料、研修資料、学会発表 |
| 好きになってもらう | 働く姿や使う姿の想像 | 採用ピッチ資料、会社紹介資料 |
束が同じなら、業種も会社の規模も違ってかまいません。
判断してもらう資料は、読み手が疑うことを前提に作られています。エン・ジャパンのメディア事業の KPIは利用企業数や応募数を6枚のカードに分けて並べていますが、どれも決算短信と突き合わせられる数字です。稟議資料も提案書も同じ性質なので、数字の並べ方はそのまま持ち帰れます。
分かってもらう資料では、読み手は疑いません。根拠より順番が大事になるので、1枚に1つずつ進めます。束が違うと、見た目がどれだけ良くても噛み合わないのは、期待されているものが入れ替わるからです。
好きになってもらう資料には正解がありません。同じ会社を説明しても、伝えたい空気で作りが変わります。
自分の場面を決める3つの質問
作り始める前に答えてください。
- 読み手は誰か
- 読み手に何を求めているか(判断・理解・共感)
- 読み手は資料を疑うか
3番目で作りが大きく変わります。
誰が何のために作っているかは、次のように分かれます。自分の場面を探してください。
| 誰が | 場面 | 作るもの | 束 |
|---|---|---|---|
| 営業 | 商談で提案する | 提案書、サービス紹介資料 | 判断 |
| 会社員 | 社内会議、稟議、報告 | 報告資料、稟議資料 | 判断 |
| 経営企画・IR | 投資家に業績を説明する | 決算説明資料、統合報告書 | 判断 |
| 起業家 | 資金調達、ピッチイベント | ピッチデック、事業計画 | 判断 |
| エンジニア | カンファレンス、勉強会で登壇する | 発表スライド | 理解 |
| 講師・研修担当 | 教える | 研修資料、授業資料 | 理解 |
| 学生・研究者 | 卒論発表、学会発表 | 発表スライド、ポスター | 理解 |
| マーケター | 見込み客を集める | ウェビナー資料、ホワイトペーパー | 理解 |
| 人事・採用担当 | 候補者に会社を説明する | 採用ピッチ資料、会社紹介資料 | 共感 |
営業職・営業企画職400名を対象にしたスマートスライドの業務実態調査(2021年)では、最も時間をかけている業務として資料作成を挙げた人が30.5%でした。2位の移動業務は19.3%です。いちばん多く作られているのは「判断してもらう」資料になります。
束が違う資料から持ち帰れるもの
束が違っても、まったく参考にならないわけではありません。借りられるものと借りられないものが分かれます。
| 借りられる | 借りられない |
|---|---|
| グラフの色数と強調の付け方 | 表紙の情報量 |
| 文字サイズの段階の付け方 | 1枚あたりの文字量 |
| 罫線と余白での区切り方 | ページの並び順 |
| 図解の型(フロー、サイクル、並列) | 写真の使いどころ |
左の列は、読み手が誰でも効きます。
右の列は読み手の期待で決まります。束を確かめずに持ち込むと、場違いになります。
探すときの手順
参考にする資料を選ぶ手順は4つです。
- 自分の束を決める(判断・理解・共感)
- 同じ束の資料を探す
- 束が違う資料からは、左の列だけ借りる
- 1枚ずつ「なぜその形か」を読む
4番目を飛ばすと、形だけ写して理由が付いてきません。表紙に写真を敷いた資料を見たとき、写真そのものではなく、写真を敷いてよい条件のほうを持ち帰ってください。条件は、読み手が会社をまだ知らないことと、言いたいことが1つに絞れていることの2つです。
スライド図鑑では、掲載している資料1本ずつに、全体の構成と、取り上げたページがなぜその形なのかの解説を付けています。資料の種類・内容・図解の型・色・業種の5つで絞り込めるので、同じ束の資料から探せます。
判断してもらう資料を見る
ギャラリーで見る →
決算説明資料/39件
いま集めているのは投資家向けの資料が中心です。「判断してもらう」束の実例として使ってください。
1枚の組み立て方はスライドの基本に、作る順番はプレゼン資料の作り方にまとめています。
掲載しているスライド
すべて見る →この型で作る
読んだ内容をそのまま自分の資料へ移すなら、現物を開いて全体の作りから確かめてください。 各資料の記事には、生成 AI へ渡せる形の書き出しも付けています。
この記事の数値は、スライド図鑑に掲載している資料を集計して算出しています。 掲載件数が増えると数値も変わるため、本文では「このデータの範囲では」という限定を付けています。 集計で言えないことは、書名と著者を挙げた出典から引いています。 下書きの生成に AI を使い、公開前に人が確認しています。
次に読む
記事一覧 →- スライドの基本になる4つの部品と6つの型
スライドはヘッダー・本文・図表・フッターの4つでできています。本文と図表の組み合わせ方を6つの型に整理して、実例へのリンクと一緒に並べました。
- プレゼン資料の作り方で先に決める5つのこと
構成・用件・図解・色・文字。決める順番を間違えると作り直しになります。どこから手を付けると手戻りが減るかを、実物のスライドへのリンク付きでまとめました。






