何を伝えるための資料か
京セラが四半期ごとに公開している決算説明会の資料です。全28ページを3章に分け、目次と章扉の両方で区切っています。
決算説明会の資料は2つの場面で読まれます。一度目は説明会の当日で、登壇者が口頭で補います。二度目は説明会のあとで、IR サイトに置かれた PDF を、誰の説明もなしに読む人がいます。後者ほど資料だけが頼りになります。
全体の作り
28ページのうち3ページが章扉、7ページが巻末の補足です。本編は18ページしかありません。
目次と章扉を両方置く
3ページ目に目次、4・13・20ページ目に章扉があります。章扉の文言は目次の項目と同じで、「1. 2027.3期 第1四半期 決算概要」から一字も変えていません。
目次で全体像を見せ、章の頭で現在地を確かめさせる組み方です。3章しかないので、両方を置いてもページ数は3枚しか増えません。
区切りのページに専用の背景を作らない
章扉は白地のままです。本編にあるヘッダーの青い縦棒と見出しだけを外し、ロゴとページ番号と著作権表記は同じ位置に残してあります。章番号を青、章名を黒にして、下へ細い青の罫線を1本引いただけです。
背景を塗った章扉にすると、資料の中で調子の違うページが4枚できます。四半期ごとに作り直す資料では、別のテンプレートを保守する手間も毎回かかります。
補足を本編と同じ型で並べる
21ページ目から27ページ目まで、事業セグメント別の表が7枚続きます。売上高・利益・受注高・設備投資額・減価償却費・研究開発費と項目が変わるだけで、表の列も色も同じです。
本編で使った表をそのまま流用しているので、読み手は1枚目の読み方を覚えれば7枚とも読めます。最後の28ページ目には、将来見通しに関する免責の全文を置いています。
色の割り当てをページごとに変えない
本文で使っている色は濃い青・薄い青・グレーの3色です。表の見出し行を濃い青、当期の列を薄い青で塗り、前期はグレーに落とします。棒グラフでも当期が青、前期がグレーです。
どのページでも割り当てが同じなので、読み手は色の意味を1度覚えれば済みます。ロゴの赤は本文には出てきません。
読み始めの2枚
決算説明会資料の表紙
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# 参考にするスライド 京セラ株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算説明会資料」1ページ目「決算説明会資料の表紙」 https://slidezukan.com/docs/kyocera-2027q1/#p1 # 分類 資料の種類:決算説明資料 スライドの内容:表紙 図版の型:なし 配色:青 # 読み取った作り - 背景と前面:青とグレーの面を斜めに切って重ね、左上の濃い青の側に白文字を置いています。斜線で分けても、文字が乗る領域だけは単色の面として確保されています。 - 構造:資料名を左上、日付と登壇者を右下に置き、対角線に沿って情報を振り分けています。面の切れ目と文字の配置が同じ角度で揃います。 - 情報量:表紙に将来見通しの注意書きまで載せ、面の外側の白地に小さく置いています。法的な文言を面の中に入れないことで、主題の文字が埋もれません。 # 資料全体の決まり - 使用する色は4色まで - 章の切れ目に中扉を置く - 表紙の配色を以降のページへ引き継ぐ - 表紙の次はサマリー # 依頼 上の作りをそのまま使って、次の内容でスライドを1枚作ってください。 内容:(ここに自分が載せたい内容を書く) 変えたいところ:(あれば書く。無ければ「なし」)
外せない要素が6つある表紙です。写真を使わずに面へ変化をつけつつ、本題でない4つを上下の白帯にまとめています。
京セラの四半期決算説明会資料の1ページ目です。
決算説明会の資料は2つの場面で読まれます。一度目は説明会の当日で、登壇者が口頭で補います。二度目は説明会のあとで、IR サイトに置かれた PDF を、誰の説明もなしに読む人がいます。機関投資家もいれば、アナリストも、報道も、個人投資家もいます。後者ほど資料だけが頼りです。
表紙だけで「何の資料か」が分かるように作らないと、二度目の読み手が困ります。社内会議の表紙にはない制約です。
数えると6種類ありました。
| 要素 | 置き場所 | なぜ要るか |
|---|---|---|
| 資料名と対象期 | 青い面の中 | 何の資料かの本体 |
| 開催日 | 右下の白地 | 四半期ごとに同名の資料が並ぶので、日付が実質の識別子になる |
| 登壇者と役職 | 右下の白地 | 誰が話したかが情報として残る |
| 社名とロゴ | 上下の白帯 | 単体で流通するので、資料だけで発行元が分かる必要がある |
| 著作権表記 | 下の白帯 | 同上 |
| 将来見通しの免責 | 上の白帯 | 業績予想を含む資料の慣行。最終ページにも置いたうえで表紙にも |
6つとも外せません。
表紙を整えるときは要素を減らすのが手っ取り早い方法ですが、京セラの表紙では使えません。社内の定例会議なら残るのは資料名と日付くらいで2つですから、要素2つの表紙と6つの表紙は、考えることがまるで違ってきます。減らせない以上、置き場所を分けるしかありません。
掲載している表紙8枚は、作り方が4通りに分かれました。
| 型 | 例 | 得るもの | 失うもの |
|---|---|---|---|
| 写真を主役にする | 野村不動産 | 事業や実績そのものを見せられる | 文字を置ける場所が写真に縛られる |
| 色の面を敷く | 明治HD | 基調色が画面を占める | 面が単調になりやすい |
| 白地に文字だけ | 任天堂、さくらインターネット、エン・ジャパン | 手間が最小で、資料名に視線が集まる | 要素が多いと雑然とする |
| 白地に図形を足す | 京セラ、ゼンリン、アイスタイル | 写真素材がなくても表情が出る | 文字と図形の干渉を設計する必要がある |
京セラは4つ目です。写真を使わずに面へ変化をつけたくて、しかも置く要素が多いときに向きます。
写真を主役にする型と比べると違いがはっきりします。野村不動産は写真を全面に敷いたうえで、半透明の白い矩形を傾けて重ね、そこへ社名と資料名を入れました。写真を使うと、文字の置き場所を別に確保しないといけません。図形なら、文字を置く単色の領域を好きな大きさに自分で取れます。
免責をどこに置くか
6つのうち、ロゴ・免責・正式社名・著作権の4つは、色の付いた面ではなく上下の白帯にあります。面に残ったのは資料名と日付・登壇者だけです。
ロゴ・免責・社名・著作権を面の中に入れたら、どうなるでしょうか。免責の3行はかなりの文字数で、小さくしても幅を取ります。青い面に入れると、白文字の資料名と背景を共有して場所を取り合います。資料名を小さくするか、免責をもっと小さくするか。どちらを選んでも損をします。
上下の白帯に置けば、取り合いになりません。
斜めの角度
斜線は2本ありますが、平行で、角度が同じです。ほかに斜めの要素はありません。画面にある角度は、水平と垂直と斜め1種の3つだけです。
角度を2種類にすると、どちらが基準なのか決まらなくなって、片方がずれて見えます。掲載している他の資料でも同じで、アイスタイルもゼンリンも、斜めや曲線を使いながら角度は1種類に絞っています。
色も青・灰・白の3色でした。斜めに切ると領域が増えるので、色まで増やすと散らかるという判断でしょう。
文字が斜線をまたがない
斜線をまたいで置かれた文字が1つもありません。白文字は青の上、黒文字は白の上だけです。おそらく表紙全体でいちばん大きい判断です。
斜めに割ったときの弱点は、境界に文字がかかったときです。背景の明るさが文字の途中で変わるので、白文字でも黒文字でも半分が読みにくくなります。影や縁取りを付ければ読めますが、表紙に要素が1つ増えます。
京セラは、文字を単色の内側だけに置いて避けています。青い面が左上に大きく取られているのも、資料名を置く単色の場所を確保するためだと読めます。
まず、表紙に載せる要素を全部書き出して、削れないものを数えてください。数によって選ぶべき型が変わります。
2〜3個しかないなら、白地に文字だけで足ります。上下に帯を作っても入れるものがなく、空の帯が残るだけです。5個以上あるなら、本題(資料名・日付・登壇者)と、ロゴ・免責・著作権・正式社名に分けて、後者を上下へ移します。写真素材があるなら写真を主役にする型も選べますが、文字を置く単色の場所を別に確保してください。
免責と著作権を入れるかどうかは、見た目の判断ではありません。資料がどこまで流通するかで決まります。多様な読み手に届いて、手を離れたあとも残る資料なら入れるべきですし、社内資料に入れても表紙が複雑になるだけです。
図形で割る型を選ぶなら、角度は1種類、色は3色まで、文字は単色の上だけ。3つを守れば、たいてい大きくは崩れません。
毎月の定例資料には向きません。作り直すたびに角度と文字位置を合わせ直すことになります。年4回だからこそ成り立っている作りだと思います。
目次
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# 参考にするスライド 京セラ株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算説明会資料」3ページ目「目次」 https://slidezukan.com/docs/kyocera-2027q1/#p3 # 分類 資料の種類:決算説明資料 スライドの内容:目次 図版の型:なし 配色:青 # 読み取った作り - 情報量:項目を3つだけにし、1行ずつ広い行間で縦に並べています。資料が3部構成であることが、読むまでもなく行数で分かります。 - 文字:項目名を本文より大きな文字で組み、連番だけを青にしています。目次のページでだけ文字を大きくして、区切りであることを示しています。 - 枠線:囲みも罫線も一切使わず、余白だけで項目を分けています。3行しかないので、線を引く必要がありません。 # 資料全体の決まり - 使用する色は4色まで - 章の切れ目に中扉を置く - 表紙の配色を以降のページへ引き継ぐ - 表紙の次はサマリー # 依頼 上の作りをそのまま使って、次の内容でスライドを1枚作ってください。 内容:(ここに自分が載せたい内容を書く) 変えたいところ:(あれば書く。無ければ「なし」)
項目が3行しかない目次です。章扉を作らず、本編と同じ枠のまま文字を数倍に拡大して区切りにしています。
京セラの決算説明会資料で目次にあたる3ページ目です。
決算説明会の資料には、投影されている最中は誰も目次を読まないという性質があります。登壇者が「本日はこの順でご説明します」と言っている数秒のあいだ、聞き手は画面をちらっと見るだけです。
あとから PDF を読む人は事情が違います。全部読むつもりがない人ほど、目次で当たりを付けてから該当ページへ飛びます。目次は、数秒しか見られない場面と、地図として使われる場面の両方を引き受けることになります。
載っているのは3行だけです。
| 行 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 2027.3期 第1四半期 決算概要 |
| 2 | 2027.3期 業績予想 |
| 3 | 【ご参考】補足資料 |
サブ項目も、ページ番号も、章ごとの要約もありません。
3行めだけが【ご参考】で括られていて、本編ではないと分かります。重みの差を、行の見た目を変えずに表記だけで示した形です。
目次を細かくすると、目次そのものを読む作業が発生します。3行なら一瞥で終わります。
掲載している資料のうち、独立した目次ページを持っているのは2本だけでした。決算説明資料では目次を置かない資料のほうが多いようです。
代わりになるのが、章の変わり目に差し込む扉ページです。掲載資料でも、章扉のある資料とない資料が分かれていました。
目次と章扉の関係を整理すると4通りになります。
| やり方 | 得るもの | 失うもの |
|---|---|---|
| 冒頭に目次を1枚 | 全体の構成が最初に分かる | 読んでいる途中で現在地を見失う |
| 章扉を各章の頭に | 現在地がいつでも分かる | 全体像が最後まで分からない |
| 両方置く | どちらも解決する | ページ数が増える |
| どちらも置かない | 最短で本題に入れる | 構成の把握を読み手に任せる |
京セラは2つ目です。章が3つしかないので、両方を置いてもページ数は3枚しか増えません。
枠を本編のまま使う
区切りのページというと、背景色を変えたり全面を塗ったりする作りをよく見ます。京セラの目次は、ヘッダーもフッターも本編とまったく同じ位置・同じ色のままです。左上に青い縦棒と「目次」、右上にロゴ、下端にページ番号と著作権。本編のスライドから中身だけを差し替えた形になっています。
専用のデザインを作れば目次らしくはなりますが、資料全体で見ると調子の違うページが混ざります。四半期ごとに作り直す資料なら、別のテンプレートを保守する手間も毎回かかります。
枠を揃えたままでも、中身が3行なら目次だと分かります。4ページ目からの章扉も同じ考え方で、ヘッダーの見出しだけを外して白地にしてあります。
文字の大きさが区切りを作る
本文領域に対して、文字が異様に大きく組まれています。本編の本文と比べると数倍あります。
3行しかないので、大きくしても収まります。逆に言えば、3行に絞ったから数倍の大きさが選べています。項目数と文字サイズは連動していて、片方だけを決めることはできません。
もし項目が8行あったらどうなるか。文字は本編と同じくらいまで小さくなり、行間も詰まります。目次のページだけ読む速度が変わるという効果は消えて、ただの一覧になります。区切りとして機能させているのは背景色ではなく文字サイズのほうなので、絞れなければ章扉を別に用意するほうが早いでしょう。
連番の色
「1.」「2.」「3.」の連番だけが青で、項目名は黒です。本文領域で色が付いているのは連番だけです。
連番を黒のままにすると、「1. 2027.3期」がひとつの塊に見えて、数字が項目名に紛れます。項目名そのものが数字で始まっているので、紛れやすさは普通の目次より高いはずです。連番を色で分ければ、項目名の側だけを続けて読めます。
まず、章が何個あるかを数えてください。3〜5個に収まるなら、京セラと同じやり方が使えます。
収まるなら、ヘッダーとフッターを本編のまま残し、ヘッダーの文字だけ「目次」に差し替えます。項目は上寄せで縦に並べ、行間を文字の高さと同じくらい取ります。罫線も囲みも要りません。3行なら、余白だけで項目が分かれて見えます。余った下の空白は埋めないでください。
章が8個を超えるなら、諦めたほうがいいです。文字を小さくして詰め込むと、区切りとしての働きがなくなります。目次は簡略な一覧に留めて、区切りは章扉のほうで作ってください。
連番に色を付けるかどうかは、項目名が数字で始まるかで決めてください。「2027.3期」のように数字で始まる項目名が並ぶなら、連番を色で分けないと読みにくくなります。
数字の見せ方を決めている3枚
売上高と税引前利益の増減
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# 参考にするスライド 京セラ株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算説明会資料」6ページ目「売上高と税引前利益の増減」 https://slidezukan.com/docs/kyocera-2027q1/#p6 # 分類 資料の種類:決算説明資料 スライドの内容:業績ハイライト 図版の型:ウォーターフォール 配色:青 # 読み取った作り - 合計の区別:始点と終点の2本をグレー、途中の増減を青にし、合計の棒だけ下端を波線で切っています。値の大きい合計を画面に収めつつ、途中の増減の幅は保たれます。 - 増減の色分け:増加も減少も同じ青で塗り、符号はラベルのマイナスだけで示しています。色数を増やさず、棒の上下位置で向きが分かる作りになっています。 - 構造:売上高と税引前利益を同じ形のウォーターフォールで左右に並べ、要因名も同じ順序に揃えています。2つの指標で同じ要因がどう効いたかを横に読めます。 # 資料全体の決まり - 使用する色は4色まで - 章の切れ目に中扉を置く - 表紙の配色を以降のページへ引き継ぐ - 表紙の次はサマリー # 依頼 上の作りをそのまま使って、次の内容でスライドを1枚作ってください。 内容:(ここに自分が載せたい内容を書く) 変えたいところ:(あれば書く。無ければ「なし」)
売上高と税引前利益を左右に並べたページです。箇条書きの項目数まで揃えて、左を読んだ人が右で探し直さずに済むようにしています。
京セラの決算説明会資料の6ページ目、四半期実績を説明する2枚目にあたります。
決算説明資料の中盤は、指標を1つずつ見せていくか、複数を並べるかの判断が要ります。1枚1指標にすればページ数が増え、複数並べれば1枚が混みます。
京セラは売上高と税引前利益を1枚にまとめました。2つには増減の要因が共通しているという事情があります。同じセグメントの増収が、売上にも利益にも効く。別々のページに分けると、読み手は同じ要因名をページをまたいで照合することになります。
本文領域が左右2列に割られていて、両側が同じ4段で組まれています。
| 段 | 左(売上高) | 右(税引前利益) |
|---|---|---|
| 小見出し | 青い縦棒+「売上高」+下の横罫 | 青い縦棒+「税引前利益」+下の横罫 |
| 箇条書き | 2項目 | 2項目 |
| 単位の注記 | (単位:億円)右寄せ | (単位:億円)右寄せ |
| グラフ | ウォーターフォール | ウォーターフォール |
段の切り替わる高さも左右でほぼ揃っています。箇条書きの項目数が2つずつで同じなのは偶然ではなく、書く量のほうを枠に合わせた結果でしょう。
掲載している業績ハイライトは20枚あります。1枚にいくつの指標を載せるかで3通りに分かれました。
| やり方 | 得るもの | 失うもの |
|---|---|---|
| 1枚1指標 | 大きく見せられて、説明の時間も取れる | ページ数が増え、指標間の関係が見えない |
| 左右2分割 | 2指標の関係が横に読める | 1つあたりの面積が半分になる |
| 格子に4分割 | 指標と比較軸を掛け合わせられる | さらに小さくなり、文章を添える余地が減る |
京セラは同じ資料の中で2つ目と3つ目を使い分けています。6ページ目が左右2分割、10ページ目が2行2列の格子です。
違いは添える文章の量にあります。6ページ目は増減の理由を箇条書きで2項目、3行前後にわたって書いています。10ページ目はグラフの横に3〜4行です。分割を増やすほど、文章に使える場所が減ります。
左右で段の高さを揃えた
小見出し、箇条書き、単位、グラフ。4段の切り替わる位置が左右でほぼ同じ高さになっています。
揃えなかったらどうなるでしょうか。
左の箇条書きが3項目で右が1項目なら、グラフの開始位置が上下にずれます。読み手は右へ移ったときに、グラフがどこから始まるかを目で探すことになります。1枚のうちで2回、別々のレイアウトを読むのと変わりません。
揃えるには、書く量のほうを枠に合わせる必要があります。左に書きたいことが3つあっても2つに削る。窮屈に見えますが、削る判断をレイアウトに肩代わりさせているとも言えます。
小見出しをヘッダーと同じ記号で作った
左右の「売上高」「税引前利益」には、ヘッダーのタイトルと同じ青い縦棒が付いています。大きさだけが一段小さくなっています。
新しい記号を足していないので、読み手が覚えることが増えません。縦棒が大きければページの題、小さければ列の題。2段階で済みます。
小見出しの下には横罫が1本あります。ヘッダーのタイトルには罫がありません。上位の見出しのほうが飾りが少ないという逆転が起きていますが、本文領域の中で列を区切る必要があるぶん、下位のほうに線が要ったのだと読めます。
文章とグラフで担当を分けた
上に箇条書き、下にグラフという配置で、書いてあることが重なっていません。
箇条書きは増えた理由と減った理由だけを書き、グラフは増減の量だけを見せます。箇条書きに数字はほとんど出てきませんし、グラフの中に理由は書かれていません。
文章とグラフを並べると、同じことを2回説明してしまいがちです。「コアコンポーネントが322億円増加しました」と書いてグラフにも322と出ていれば、読み手はどちらかを読み飛ばします。役割を分ければ、両方を読む意味が生まれます。
合計の棒だけ下端を波線で切った
グラフの中も見ておきます。左右どちらのウォーターフォールも、始点と終点の2本だけ下端が波線で切られています。
売上高なら4,780から5,254への変化で、途中の増減は322・198・−54・8と桁が2つ小さくなります。合計の棒を実寸で描くと、途中の棒がほとんど見えません。波線で切れば、合計の存在を示しながら途中の増減の幅を保てます。
色は2色だけです。
合計の2本がグレー、途中の増減が青。増加と減少で色を変えていません。−54も8も同じ青で、符号はラベルの「−」だけが担当します。棒の位置が上下にずれるので向きは分かる、という判断でしょう。
指標を1枚にまとめるかどうかは、増減の要因が共通しているかで決めてください。共通しているなら並べる価値があります。要因が別々なら、分けたほうが読み手は楽です。
左右に並べると決めたら、先に段の構成を決めて両側に同じ枠を用意します。書いてから枠を調整するのではなく、枠に合わせて書く量を削るほうが早く収まります。箇条書きの項目数も揃えてください。
文章とグラフを両方置くなら、担当を先に決めます。文章は理由、グラフは量。決めておかないと、書いているうちに数字が文章へ入り込みます。
ウォーターフォールで合計と途中の桁が違うときは、合計の棒だけ下端を波線で切ってください。軸の目盛りを対数にする手もありますが、決算資料の読み手には向きません。増減の色を分けるかどうかは、棒の上下位置で向きが分かるなら不要です。
コアコンポーネントセグメントの実績
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# 参考にするスライド 京セラ株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算説明会資料」10ページ目「コアコンポーネントセグメントの実績」 https://slidezukan.com/docs/kyocera-2027q1/#p10 # 分類 資料の種類:決算説明資料 スライドの内容:業績ハイライト 図版の型:棒グラフ 配色:青 # 読み取った作り - 強調の絞り方:どのグラフでも当四半期の1本だけを青にし、比較対象をグレー、それ以外を薄いグレーの3段に分けています。同じ画面に4つのグラフがあっても、見るべき棒は常に右端の青になります。 - 構造:上段に前年同期比較、下段に直前四半期比較を置き、左右で売上高と利益に分けています。2行2列のどこを見ても、同じ読み方が通用します。 - 図と文章の分担:各グラフの右に増減の理由を2〜3行で添えています。グラフは差の大きさ、文章は理由と、役割が重なりません。 # 資料全体の決まり - 使用する色は4色まで - 章の切れ目に中扉を置く - 表紙の配色を以降のページへ引き継ぐ - 表紙の次はサマリー # 依頼 上の作りをそのまま使って、次の内容でスライドを1枚作ってください。 内容:(ここに自分が載せたい内容を書く) 変えたいところ:(あれば書く。無ければ「なし」)
グラフを4つ載せたページです。縦と横それぞれに意味をひとつだけ割り当てて、4か所を同じ形で埋めています。
京セラの決算説明会資料の10ページ目、セグメント別の実績を説明するページです。
セグメント説明のページには、比較の相手が2つあるという難しさがあります。前年の同じ四半期と比べたいし、直前の四半期とも比べたい。指標も売上高と利益の2つを見せたい。
掛け合わせると4通りになります。
4枚に分けるか、1枚に詰めるか。京セラは1枚に詰めるほうを選びました。
本文領域が2行2列に割られ、4か所すべてに同じ組が入っています。
| 左:売上高 | 右:事業利益(利益率) | |
|---|---|---|
| 上:前年同期比較 | 棒2本+増減率+文章 | 棒2本+増減率+文章 |
| 下:直前四半期比較 | 棒5本+増減率+文章 | 棒5本+増減率+文章 |
各ブロックの中身は、青い丸と小見出し、右に「(単位:億円)」、その下に棒グラフ、グラフの右に増減理由が3〜4行。例外はひとつもありません。
上下の境目には点線が1本引かれています。左右の境目には線がありません。
掲載している業績ハイライト20枚のうち、1枚に4つのグラフを入れているのは京セラだけでした。多くは1指標か2指標です。
4つ入れて読めるかどうかは、軸の決め方で変わります。
| 4分割の割り当て方 | 読めるか |
|---|---|
| 縦=比較の相手、横=指標 | どこを見ても読み方が同じで、迷わない |
| 4つを別々の話にする | 4回それぞれ読み方を覚え直すことになる |
京セラは前者です。縦の位置が「何と比べたか」、横の位置が「何の数字か」に固定されています。左上を読んで読み方を覚えれば、残り3つは同じ手順で読めます。
軸に意味を割り当てずに4つ並べると、密度は同じでも読む負担が4倍になります。4分割が成り立つかどうかは、グラフの出来ではなく軸の設計で決まります。
線を引く場所を選んだ
上下の境目にだけ点線があって、左右の境目には線がありません。
左右は、ページ上部の「売上高」「事業利益(利益率)」という小見出しで分かれています。見出しが近いので、線がなくても列の切れ目が分かります。
上下は事情が違います。「前年同期比較」と「直前四半期比較」の見出しは各ブロックの頭にありますが、左右2つずつに分かれていて、行全体をまとめる見出しがありません。行の切れ目を示すものが必要になり、点線1本が引かれました。
4辺すべてに線を引くと格子になります。格子にすると枠が主役になって、中のグラフより先に線が目に入ります。必要な1本だけを引く判断です。
グラフの枠を本数に関わらず同じにした
上段は棒が2本、下段は5本です。本数が違うのに、描画領域の幅と高さは4つとも同じに取られています。
増えたぶんは棒を細くして吸収していて、枠のほうを広げていません。
枠を広げていたら、下段が上段より大きくなります。前年同期比較と直前四半期比較に重みの差はないので、大きさが違うと「下のほうが重要なのか」と読まれます。意図しない序列が生まれるくらいなら、棒を細くするほうが安全でしょう。
棒の色を3段階にした
塗りは3種類です。
- 青 — 当四半期。どのグラフでも右端の1本だけ
- 濃いグレー — 比較の相手。上段は前年同期、下段は4Q
- 薄いグレー — それ以外の参考値。下段の1Q〜3Q
下段は5本並びますが、見るべき2本だけが濃く、残り3本は薄くなっています。時系列の流れは見えたまま、比較の対象だけが浮き上がります。
上段は棒が2本しかないので、薄いグレーが登場しません。3段階を用意していても、全部のグラフで3色使うわけではない、ということです。
参考値まで濃く塗ると、5本が対等に見えます。読み手は5本すべてを比べようとして、どこを見ればいいか分からなくなります。
増減率を線と矢印で結んだ
比較する2本の上に、細い線と矢印で増減率が書かれています。「+22.1%」「+67.9%」「+1.0%」「+87.0%」の4つです。
線は比較元の棒の上から出て、比較先の棒の上に矢印で降ります。どの棒とどの棒を比べた数字なのかが、線の両端で分かる形です。
増減率だけをグラフの脇に置く作りもありますが、下段のように棒が5本あると何と何の比較か読み取れません。線で結べば、5本のうち2本だけの話だと伝わります。
文章をグラフの下でなく右に置いた
各ブロックで、文章はグラフの右にあります。
グラフの下に置くとブロックの縦が伸びて、2行2列に収まりません。
横に並べれば、グラフの高さの中に文章が収まります。3〜4行という長さも、グラフの描画領域とほぼ同じ高さになるよう調整されたものでしょう。
書いてあるのは理由だけです。「+22.1%」はグラフ側にあるので、文章は「半導体製造装置向けファインセラミック部品…の販売増を主因に増加」と要因だけを述べています。
4つ並べる前に、縦と横に何を割り当てるかを決めてください。縦が比較の相手、横が指標。2つが決まれば4分割は読めます。決まらないなら、4つを1枚に入れるのは諦めたほうがいいです。
割り当てが決まったら、4か所を同じ順・同じ配置の組で埋めます。1か所だけ文章を増やしたり、グラフの種類を変えたりすると、そこで読み方が途切れます。
グラフの描画枠は、棒の本数が違っても同じ大きさに取ってください。本数の差は棒の太さで吸収します。
棒の色は3段階まで。当期、比較対象、参考値です。参考値がないグラフでは2色に留めます。増減率を書くときは、比較した2本を線と矢印で結んでください。
文章はグラフの下ではなく右に置き、グラフの高さに収まる字数まで削ります。収まらないなら、そもそも4分割が無理な密度だという合図です。
ROE 予想の上方修正
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# 参考にするスライド 京セラ株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算説明会資料」19ページ目「ROE 予想の上方修正」 https://slidezukan.com/docs/kyocera-2027q1/#p19 # 分類 資料の種類:決算説明資料 スライドの内容:中期計画 図版の型:階段 配色:青 # 読み取った作り - 箱の大きさと色:実績・前回予想・今回予想・目標の4つを円で置き、今回予想だけ塗りつぶしの青、他は白抜きか点線にしています。4つのうちどれが今日の主題かが、塗りだけで決まります。 - 矢印の向き:左下の実績から右上の今回予想へ太い矢印を1本引き、前回予想は点線の円として脇に外しています。修正前を消さずに、経路からだけ外しています。 - 構造:画面下部に成長の手段を3本の帯として敷き、上の円の動きを支える形にしています。上段が結果、下段が手段と、縦の位置で役割が分かれます。 # 資料全体の決まり - 使用する色は4色まで - 章の切れ目に中扉を置く - 表紙の配色を以降のページへ引き継ぐ - 表紙の次はサマリー # 依頼 上の作りをそのまま使って、次の内容でスライドを1枚作ってください。 内容:(ここに自分が載せたい内容を書く) 変えたいところ:(あれば書く。無ければ「なし」)
予想を上方修正したページです。取り下げた前回予想を消さずに残し、塗りの3段階だけで確定と未確定を分けています。
京セラの決算説明会資料の19ページ目、ROE の予想を引き上げたことを伝えるページです。
数字を上方修正したときのスライドには、決まった難しさがあります。上げた数字を見せたいのに、上げる前の数字を消すと都合のいいところだけを出したように見えます。両方を同じ調子で並べると、今度はどちらが今日の話なのか分かりません。
厄介なのは、混ぜたくないものが3種類あることです。すでに確定した実績、今日発表する予想、まだ届いていない中期の目標。どれも ROE の数字で、桁も近い。
ページを構成しているのは4つです。
| 部品 | 中身 |
|---|---|
| ヘッダー | 左に「ROE予想の上方修正」、右に社名ロゴ |
| メッセージライン | 「利益成長に伴いROE予想を4.9%に引き上げ / ROE 5%以上達成の1年早期化を目指す」 |
| 図 | 薄い青の面1枚。上辺の罫から底の帯まで全部で1つ |
| フッター | 中央にページ番号「19」、右に著作権表記 |
図の中には ROE の円が4つ、左上に吹き出しが1つ、矢印が2本、底に帯が3本あります。
決算説明資料としては標準的な骨格で、変わった部品はひとつも足していません。
目標値を示すスライドで、現在地と目標をどう並べるかには何通りかあります。
| やり方 | 得るもの | 失うもの |
|---|---|---|
| 折れ線や棒で時系列に並べる | 推移の形がそのまま見える | 予想と実績の区別が付きにくい |
| 現在と目標の2つだけ置く | 差が一目で分かる | 途中の経路が見えない |
| 節目だけを図形で置く | 確定・未確定を形で分けられる | 目盛りがないので差の大きさは伝わらない |
京セラは3つ目です。4.3% → 4.9% → 5.0%という差は、グラフにすればわずかな高低差にしかなりません。目盛りを付けて正確に描くほど、伝えたい「引き上げた」という事実が目立たなくなります。
図形で置けば、差の大きさではなく状態の違いを主役にできます。
取り下げた数字を消していない
前回予想の4.3%が、今回予想の円の真下に残っています。
消したほうが画面はすっきりします。消すと、4.3%から4.9%への0.6ポイントという変化量を読み手が計算できなくなります。
「+0.6pt」という差分ラベルはありません。2つの円が上下に並んでいれば、読み手が引き算します。差分を数字で書くと、今度はその数字自体が主張に見えてしまう。数字を並べるだけに留めて、解釈を読み手に渡した形です。
塗りを3段階に分けた
円は4つありますが、塗り方は3通りです。
- ベタ塗り(濃い青・白文字・いちばん大きい) — 今回予想4.9%
- 白塗りに実線の輪郭 — 2026.3期の実績4.3%
- 白塗りに点線の輪郭 — 前回予想4.3%、2028.3期目標5.0%以上
点線が「確定していないもの」を指しています。取り下げた予想と、まだ届いていない目標。性質は違いますが、どちらも確定していないという点で同じなので、同じ扱いに揃えました。
分類の軸を1本に絞ったぶん、読み手が覚えることが減ります。取り下げ用と目標用で別の見た目を用意すると、凡例が要ります。
確定しているもののうち、今日の主題だけがベタ塗りです。ページを開いた瞬間に目が行くのは4.9%の円だけになります。「本日のポイント」といった言葉はひとつも置かれていません。
同じ数字を位置で見分けさせた
ページ上に4.3%が2つ出てきます。2026.3期の実績と、前回予想です。
同じ値ですが混ざりません。色も太さも変えず、置いた場所と矢印の経路だけで区別しているためです。太い矢印は左下の実績から今回予想へ1本だけ伸びていて、前回予想は経路の外に置かれています。
色で分けようとすると、すでに3段階ある塗りにもう1つ区別が加わります。位置で済むなら、そちらのほうが安くつきます。
手段の帯を図の中に入れた
底の帯3本は、図の外に別ブロックとして置くこともできたはずです。面の内側に入っています。
入れた位置が意味を持ちます。面の上半分に円、底に帯。上下の関係だけで「この数字はこの3本で作る」という従属が伝わります。矢印で結んだり「※ 施策」と注記したりせずに済んでいます。
帯を図の外に出していたら、数字の話と施策の話が並列に見えます。
帯3本は同じ形・同じ色で、序列が付いていません。手段の一覧であって主張ではないからでしょう。1本だけ短く右寄りから始まっているのは、成果の出る時期の違いを長さで示したものだと読めます。
上方修正を伝えるなら、まず前回の数字を残すかどうかを決めてください。残すほうを勧めます。消すと、読み手は変化量を自分で調べることになります。
残すと決めたら、確定と未確定の分け方を1本の軸に絞ります。実線と点線の2段階で足ります。取り下げた予想と未達の目標を別々の見た目にすると、凡例が必要になります。
今日の主題だけをベタ塗りにしてください。塗りつぶしは1つだけです。2つ以上あると、どちらが今日の話か分からなくなります。
同じ値が2回出てくるときは、色を足す前に位置で分けられないか試してください。矢印の経路に乗せるか外すかだけで、たいてい区別が付きます。
施策や前提を書きたい場合は、図の外へ出さずに図の底へ入れます。上に結果、下に手段という位置関係だけで、従属が伝わります。
自分で作るなら
28ページのうち、作りを決めているのは3つです。目次と章扉を両方置くこと、区切りに専用の背景を作らないこと、色の割り当てをページごとに変えないこと。
順番としては、まず章を3つから5つに決めてください。章が決まれば目次の行数も章扉の枚数も決まります。次に本編の表とグラフで、当期・前期・強調の3つにどの色を当てるかを決めます。2つが決まれば、残りのページは数字を差し替えるだけになります。
補足資料は最後です。本編で使った表をそのまま流用して、項目だけを変えて並べてください。新しい型を作ると、読み手が読み方を覚え直すことになります。